9月入学のメリットは、次の2つである。
(1)海外と入学時期を合わせて、留学生や教授の交流を促進する。
(2)今年度の学習内容がこなせなくなることへの不安を解消する。
この2つに比べれば、これ以外のことは9月入学を決断するに足る理由とは言えない。たとえば、受験の時期が雪の季節であることだけで9月入学に変更する理由とはならない。あえて言えばそれは付加的なメリットと言えるだろう。
私は、(1)には賛成だが、(2)に反対する。正確には、(1)にするために、日本の子どもたちの進級時期を半年遅らせることに反対する。むしろ半年早めてほしい。半年早く小学校に入学し、半年早く高校を卒業して留学する、という意味である。就学前の幼児教育熱は年々高まり、小学校入学時の格差が大きくなっている。また、年々高学歴化が進み、社会に出る年齢がどんどん遅くなっている。
さらに、(2)は(1)より格段に重要な問題である。(1)をやる、やらないにかかわらず、(2)はあらゆる対策を講じなければならない。今、一部で行われているのは、オンライン授業である。オンラインが進まなくても、プリントや家庭訪問等で様々な努力がなされている。
そこで私は違った角度から(2)の問題を考えてみたい。それは、今年度の学習内容を軽減できないかということである。学習しなければならない内容が減少すれば、夏休みをつぶしたり、土日も授業などという児童・生徒にこれ以上の負担を強いる必要がなくなる。
以下に示すのは、学習指導要領(数学)の一部である。全体は、文部科学省のホームページで確認できる。ただし、赤字は私の分析で、学習指導要領には書いてない。
中学校学習指導要領(数学)
第3学年
A 数と式
・平方根 -----高校 数学Ⅰ(1)数と式
・式の展開と因数分解 -----高校 数学Ⅰ(1)数と式
・二次方程式 -----高校 数学Ⅰ(3)二次関数
B 図形
・図形と相似 -----高校 数学A(3)図形の性質
・円周角と中心角 -----高校 数学A(3)図形の性質
・三平方の定理 -----高校 数学Ⅰ(2)図形の計量
C 関数
・関数 -----高校 数学Ⅰ(3)二次関数
D データの活用
・標本調査 -----高校 数学Ⅰ(4)データの分析
(数学的活動)
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高等学校学習指導要領(数学)
数学Ⅰ
(1)数と式
ア 数と集合
(実数、集合)
イ 式
(式の展開と因数分解、一次不等式)
(2)図形と計量
ア 三角比
イ 図形の計量
(平面図形、空間図形)
(3)二次関数
ア 二次関数とそのグラフ
イ 二次関数の値の変化
(最大・最小、二次方程式・二次不等式)
(4)データの分析
ア データの散らばり
(四分位数、分散、標準偏差)
イ データの活用
(散布図、相関係数)
(5)課題学習
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数学A
(1)場合の数と確率
ア 場合の数
(数え上げの原則、順列・組合せ)
イ 確率
(基本的な法則、独立試行、条件付確率)
(2)整数の性質
ア 約数と倍数
(最大公約数、二元一次不定方程式)
ウ 整数の性質の利用
(3)図形の性質
ア 平面図形
(三角形の性質、円の性質、作図)
イ 空間図形
(直線や平面の位置関係、多面体)
(4)課題学習
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中学校学習指導要領(数学)と高等学校学習指導要領(数学)を比較すると、
赤字の部分 「-----高校・・・」という書き込みは、私の分析。
のとおり中学の学習内容は高校で再学習し、発展するよう組み立てられている。したがって、中学での学習が不十分でも高校で補えるようになっている。これを「スパイラル方式」と言う。腕や脚に包帯を巻くように、同じ内容を復習しながら、さらに深めていく方式になっている。したがって、中学の時、けがや病気などのため、学校を長期に休んだ生徒も、留年などはせず、進級や進学をしている。
また、私立の中学では、高校へ内部進学する生徒に対して、高校受験の学習が必要ない分、高校の内容を先取り学習している。したがって、高校で一部外部の生徒を受け入れた場合など、補習をしながら並行して、高校の内容を授業している。
このようにすでに中学でも高校でも、学習指導要領の内容をうまく連携して、長期に授業を受けなかった生徒が学校から脱落しなくて済むようなノウハウを持っている。
優秀ですよ、学校の先生は。それに熱心で、熱意もある。私は信じている。きっと数年後、「そんなこともあったね。」と笑える日が来ていることを。
あらためて結論を述べると、今年度は中学3年生の内容を基礎・基本にしぼって学習する。応用的なことは、高校で改めて学習する、そのために学習内容を精選するというのが良いと思う。