高校数学の解き方

高校数学の教科書や大学入試の問題を解いています。簡潔で分かりやすい解答、模範解答を目指します。

この問題をどのように解きますか?

問題

1本50円の鉛筆と1本70円の鉛筆を、合わせて40本買ったら、代金の合計が2320円でした。50円の鉛筆と70円の鉛筆の本数をそれぞれ求めなさい。

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みなさんは、この問題をどのように解きますか?

下に、いろいろな解き方を示してみます。

 

 

 

 

 

 

解答

・小学5年教科書の解き方

\; 50円の鉛筆(本)\; \; 20 \; \; 21 \; \; 22 \; \; 23 \; \; 24 \;
\; 70円の鉛筆(本)\; \; 20 \; \; 19 \; \; 18 \; \; 17 \; \; 16 \;
\; 代金の合計(円)\; 2400 2380 2360 2340 2320

   (答)50円の鉛筆24本、70円の鉛筆16本

 

・小学6年教科書の解き方

\; 50円の鉛筆(本)\; \; 40 \; \; 39 \; \; 38 \; \; \cdots \; \; \cdots \; \;   \;
\; 70円の鉛筆(本)\; \; \; 0 \; \; \; 1 \; \; \; 2 \; \; \cdots \; \; \cdots \; \; \;   \;
\; 代金の合計(円)\; 2000 2020 2040       2320

   \; (2320-2000) \div (2020-2000)=16 \;

   \; 40-16=24 \;

   (答)50円の鉛筆24本、70円の鉛筆16本

 

・中学受験テキストの解き方

\; 40 \; 本すべてが\; 50 \; 円の鉛筆と考えると、つるかめ算だから、

   \; (2320-50 \times 40) \div (70-50)=16 \;

   \; 40-16=24 \;

   (答)50円の鉛筆24本、70円の鉛筆16本

 

・中学1年教科書の解き方

\; 50 \; 円の鉛筆の本数を\; x \; 本とすると、\; 70 \; 円の鉛筆の本数は\; (40-x) \; 本だから、

   \; 50x+70(40-x)=2320 \;

これを解くと、\; x=24 \;

       \; 40-24=16 \;

   (答)50円の鉛筆24本、70円の鉛筆16本

 

・中学2年教科書の解き方

\; 50 \; 円の鉛筆の本数を\; x \; 本、\; 70 \; 円の鉛筆の本数を\; y \; 本とすると、

   \; \genfrac{\{}{.}{0pt}{0}{x+y=40\; \; \; \; \; \; \; \; }{50x+70y=2320}\;

これを解くと、\; x=24,\; \; y=16 \;

   (答)50円の鉛筆24本、70円の鉛筆16本

 

他にも解き方はいろいろあります。算数や数学を教える目的が、問題を解けるようにさせることならば、この問題は最後の中学2年教科書の解き方(連立方程式)を教えるのが、もっとも効率が良いでしょう。大人が解く場合も、連立方程式で解くのではないでしょうか。大人になっても覚えているのが連立方程式なら、初めからそれを教えれば良いという考え方をする人もいます。

ところが、算数や数学を教える目的は、問題を解く技術を教えることではありません。算数や数学は、新しい概念を教える教科です。よって、算数・数学教育における算数や数学の問題は、その概念の理解を確かめるための問題です。もちろん、その過程で、論理的思考力や将来使うであろう計算力も育てます。もちろん、人類がこれまで積み上げてきた文化の伝承という意味もあるでしょう。

小学5年の教科書の解き方や小学6年の教科書の解き方は、「2つの数量の関係」の問題で、のちに「比例」や「一次関数」という概念の学習につながります。

中学1年教科書の解き方や中学2年教科書の解き方は、「一次方程式」や「連立方程式」という概念の問題です。

中学受験テキストの解き方は、「和算」の考え方を使っています。「和算」は学習指導要領には組み込まれていないので、教科書ではこの解き方は載っていません。載っている教科書があったとしても、「余談」扱いです。したがって、中学入試ではまったく出さない学校もあります。また、中学受験テキストに「和算」で解いてあっても、実際には学習指導要領の範囲で解ける問題がほとんどです。

 

中学受験テキストやネット上には、つぎのような解き方や、これと同様の考え方の解き方も数多く載っています。

\; 50 \; 円の鉛筆の本数を\; □\; 本、\; 70 \; 円の鉛筆の本数を\; ○\; 本とすると、

   \; □+○=40\; ・・・\; ①、\; 50×□+70×○=2320\; ・・・\;

①に\; 50\; をかけると、\; 50×□+50×○=2000\; ・・・\;

②と③をくらべると、\; 20×○=320\;  とわかるから、\; ○=16\;

\; ○=16\; と①から、\; □=24\;

   (答)50円の鉛筆24本、70円の鉛筆16本

 

③の式を作るとき、「等式の性質」を使っています。これは中学1年の数学で学習します。また、加減法も使っていますので、中学2年の連立方程式の解き方です。文字を使わないで、\; □\; \; ○\; を使えば小学生に分かると勘違いをしています。もちろん、解き方は小学生にもわかると思いますが、そこで使われている数学の概念を、小学生が理解しているとは思えません。こんなとき、子どもたちの多くは、わかったふりをして、間違った教え方をしている大人を助けてくれています。

ところが、この解き方で、使われている数学の概念を理解してしまう小学生が、少なからずいます。そんな子は、だれがどんな教え方をしても物事の本質を理解し、自分の中で合理的な数学の世界を構築していきます。だから、子は親を超え、児童・生徒は先生を超えるのです。そうやって人類は進化してきたのではないでしょうか。子が親を超えなければ、人類の進化はなかったでしょう。

たとえ大人が間違った教え方をしていても、わかったふりをしてくれる子や、その問題の奥にひそむ本質を理解する子に助けられています。そうやってこれまで人類が積み上げてきた文化を、次の世代へと伝えていくことが出来ているのです。